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テキーラ グラスの中に”メキシコ”がある ーCRT(テキーラ規制委員会)にスペシャルインタビュー

更新日:2021年7月6日


こんにちは!テキーラには沢山の楽しみ方があります。美味しいカクテルにしたり、ショットグラスで一気飲み(あまりおすすめではないですが・・・)、本格的なテイスティングイベントやクラスで学ぶ機会もあります。


皆さんはテキーラにどんなイメージを持っていますか?「度数が高くて飲めない」、「意識がなくなるぐらい危険な酒」、「ヤバいやつしか飲まない」などのイメージが日本にまだまだ多いかもしれません。


そこで今回は多くの方がまだ知らない、「テキーラの本当の姿」をご紹介するため、テキーラ規制委員会(Consejo Regulador de Tequila, CRT)のアジア担当のAlbaさんにお話を伺いました。テキーラはメキシコの法律により、大変厳しく規制されたお酒であるということをCRTの役割や活動と併せてご紹介します。今回のインタビュー記事で、テキーラへのイメージが変わるかもしれません。それでは、どうぞ。


English 英語全文はこちら→https://www.mexi-town.com/post/crt_tequila_eng

 

<目次>

 

1994年に設立した適正評価機関

MEXI TOWN (MT):今回はメキシコ情報サイト初となるメキシコのCRTのアジア担当のアルバ・アビレス(Alba Aviles)さんにインタビューします。Albaさん、インタビューのご快諾ありがとうございます。


Alba:CRTへようこそ!私たちもテキーラに興味を持ち、テキーラの文化や歴史、本当の価値を知りたい、勉強したい方々と会うことをいつも楽しみしてます。


MT:テキーラ愛好家の方ならCRTのことを耳にしたことがあるかもしれませんが、多分多くの方はまだ知らないと思いますので、まずはCRTはどんな機関かを教えてください。


Alba:もちろんです!CRTはテキーラの専門家からなる連携機関で、テキーラの生産に関わる方々が1994年5月に設立しました。私たちは適性評価機関として、「検査部門」、「認証部門」、「ラボ」、と「国内及び海外オフィス」を軸として機能しています。海外にもオフィスがあり、現在は中国、スペイン、スイス、アメリカにあります。


CRTはヨーロッパの原産地呼称制度に基づいて、メキシコの認証機関EMA(Entidad Mexicana de Acreditación)と基準総局のDGN(Dirección General de Normas)に認定された中立的な立場のNPO(非営利団体)です。


CRTは主にこの四つのメンバーで構成しています:


  1. アガベ農家

  2. テキーラ生産者(蒸留所)

  3. 瓶詰め業者

  4. メキシコ政府


私たちは作られたすべてのテキーラが法律で決められた基準に満たしていることと、消費者の安全・安心を守ります。


MT:ありがとうございます、CRTはテキーラの生産者と消費者にはとても重要な役割を果たしているのですね!詳しい業務内容を聞かせてください。


Alba:CRTは適性評価機関なので、基本的にテキーラ業界から独立した第三者の監査と検査機関という存在だと考えていただければ良いと思います。


私たちはメキシコ基準 NOM-006 に基づいて、審査及び認証をします。メキシコと海外でのテキーラの原産地呼称を保護し、消費者に本物のテキーラを証明し、原材料のアガベからテキーラができるまでのプロダクトチェーンに関する正確な情報をタイムリーに発表しています。 そして、私たちは中立的な立場で、どのブランドに対しても忖度はせず、「良いテキーラ」や「ハイクオリティなテキーラ」ということもございません


「テキーラ」という名前の所有権はメキシコ政府にあり、原産地呼称制度に認定されたものです。「100%アガベテキーラ」というカテゴリーは使用する原材料(アガベアスル)から最後の製造プロセスまで、すべてはメキシコ国内の許可された指定地域内で完結しなければなりません。あの有名なシャンパンとコニャックが特定地域でしか作れないと同じです。例外は「テキーラ」というカテゴリーです。こちらは最低51%のアガベ原料と49%の他の糖類で作られたもので、指定地域外のメキシコ経産省に認定されたボトリング工場でも瓶詰めができます。


CRTのそれぞれの部門の役割をご紹介


CRTは 3 つのメイン部門とCRTの活動をサポートするマネジメント部門で構成されています。


  1. 検査部門(Inspection)

  2. 認証部門(Certification)

  3. ラボ(Laboratory)

  4. 国際部門(International Affair、国際業務)



検査部門の仕事:

1. 製造現場で原材料(アガベアスル、スペイン語:agave azul)の確認から、すべての製造プロセスをロットごとに毎回チェックします。


(a) アガベアスルは原産地呼称の指定地域のメキシコの5 州 (ハリスコ、グアナファト、ミチョアカン、タマウリパス、ナヤリ) 内の合計 181 の自治体(市町村)で生産されたもの。


(b) 事前登録されたアガベ畑で栽培されたもののみ使えます。テキーラの生産に使われたアガベはCRTに登録しなければなりません。 アガベが「ヒマ」 (収穫、スペイン語でJima) からテキーラ蒸留所に到着するまでは必ずNOM-006 の基準に従わなければなりません。


2. テキーラや100%アガベテキーラの調合(formulation)のをチェックし、他の糖類の在庫と消費量 (「テキーラ」というカテゴリーの場合) も確認します。


3. 書類の審查。例えば会計の書類(購買記録など)、ラベルを含む商品情報の正確性や適正な製造プロセスおよびクオリティーシステムなどを審査します。


4. ラボでサンプリングと使われた材料のバランス性を検査します。


テキーラの製造過程の標準化とクオリティー、安全性を保つため、すべての製造プロセスはメキシコのテキーラ公式基準(Norma Oficial Mexicana, NOM-006-SCFI-2012 , Alcoholic-drinks-Tequila-Specifications)、と規制に従わなければなりません。


認証部門の仕事:

検査部門の合格結果に対して証明書を発行します。 全部の製造過程がテキーラ公式基準(NOM-006-SCFI-2012) に満たしていれば、認証部門は証明書を発行します。



証明書は種類は主にこの四つになります:


1. 最新基準(NOM-006) を満たす証明書

2. 瓶詰めされない純正テキーラの輸出証明書

3. 瓶詰めされた純正テキーラの証明書

4. 瓶詰めされない純正テキーラのメキシコ国内販売のための証明書


輸出証明書はCRT が輸出者に発行して、ボトルまたはタンクに入れてるスピリットは本物のテキーラであることを証明するためです。


テキーラがメキシコから輸出される時には、輸出証明書1 部がメキシコ税関に提出され、もう1部は輸入国の港の税関に提出する必要があります。


ラボの検査内容:

1. 使用する原材料中の糖類(アガベ、その他の糖類)

2. 製造されたすべてのテキーラのロットごとのサンプルテスト。アルコール飲料としての安全性とすべての規制に従っているかどうかを確認します。


国際部門の仕事はメキシコ外国政府と協力:

1. 世界におけるテキーラの原産地呼称(Designation of Origin of Tequila, DOT)の保護と登録。事務所は本社のグアダラハラ(メキシコ) 、ワシントンDC(アメリカ)、ジュネーブ(スイス)、マドリード(スペイン)、と上海 (中国) にあります

2. 世界中にある偽物のテキーラやテキーラと呼べる基準に満たしてないテキーラの摘発、及び匿名での摘発も受け付けます

3. 海外で瓶詰めするテキーラ(100%アガベではないカテゴリー)の監視と不正を防止します

4. テキーラ文化の育成のため、「ディスティンティボ・テー」(スペイン語:Distintivo T) と「プロフェッションナルリゼション・イン・ザ・カルチャ・オフ・テキーラ」(英語:Professionalization in the culture of Tequila) というプログラムを開催しています。 また、テキーラのブランドを特定しないテイスティングやペアリングイベントも随時開催しています。


MT: すごいですね!CRTはとても高い基準と厳しい規制でテキーラを保護し、アルコール飲料の安全性をガードしていることがよくわかりました!とても面白そうな仕事なので、CRTで働きたい人はきっと沢山いると思います。 CRTでは、どんな人材を求めていますか?


また、「ディスティンティボ・テー」、「プロフェッションナルリゼション・イン・ザ・カルチャ・オフ・テキーラ」、とテイスティングやペアリングイベントについて、詳しい内容を教えていただけますか?


テキーラのことを勉強しませんか?


Alba: 私たちは常にテキーラに対して情熱と専門の知識と技術を持っている人を大歓迎しています。 大卒以上の方で、農業、エンジニア、ラボ、微生物学者、総務、税関、会計などの専門家を募集しています。


飲食店向きの資格「ディスティンティーボ・テー」


「ディスティンティボ・テー」については、ここまでの話より、もっと興味のある方が多い話題かもしれませんね(笑)!このプログラムはCRT によって設計され、目標はアガベとテキーラのプロダクトチェーンとそれに関する組織のニーズを満たす、本物のテキーラ文化を広める、テキーラの消費を促進する、およびテキーラの原産地呼称をメキシコの国の文化遺産として保護するために 2003 年に始めました。


スペイン語では「ディスティンティボ・テー」で、英語では「アワード・ティー」(Award T)とも呼ばれています。スペイン語原文の意味は、このプログラムで学んだテキーラの知識と受けたトレーニングは、誰よりも優れていることを意味しています。


参加できる方はレストラン、バー、イベント、ショールーム、ホスピタリティ施設の関係者です。個人では参加できません。


このプログラムでは、事業主から従業員まで、次の内容を受講できます:


1. アルコール飲料とテキーラ規制の紹介

2. テキーラの歴史

3. アガベの栽培と収穫

4. テキーラ作りのプロセス

5. ティスティングと最終試験


テイスティング(事前申し込み制) を行うとき、通常は最低3つのクラスのテキーラ、 ブランコ、レポサド、アネホを用意して頂く必要があります。テキーラホベン(ゴールド)とエクストラアネホの用意はオプションです。プログラムで学んだ知識とティスティングの実技を合わせて、正しい味わい方を身につけます。


テイスティングに使用するテキーラは、純正テキーラであればブランドと価格は問いません。その理由はCRT がどのブランドにも忖度していないことと、このテイスティングの目標が映画やドラマでよく出てくる神の舌を持つキャラのように、一口飲んだだけでこのお酒に入ってる香りと味をすべて言い出せるようになれるためのトレーニングではないからです(大笑)。


目的はテキーラの3つのクラス(または5つのクラス)のそれぞれの違いと正しく味わう方法を知ってもらうことです。 また、お客様にテキーラを最適なプレゼンテーションの方法を指導をするために、お店や施設の現場審査も行います。


そしてこのプログラムには最終試験があります。この試験に合格するためには、正答率が80%以上なければなりません。合格後には、お店や施設に飾れるディプロマとDistintivo Tのプレートを受け取ることができます。


このプログラムとトレーニングは無料です。 CRTは開催必要のコスト以外に料金を受け取ることはありません。


海外で開催する場合でも、当地の協力団体や個人がこのプログラムの開催で収入を得ることができません。開催に必要なコストは、講師の交通費、食事代、ホテル代、Distintivo Tプレート代(試験に合格した場合)とその他の費用だけです。アジアで開催する場合は大体私が講師になります。


MT: とても素晴らしいプログラム、しかも無料とは!こんなにいいことってあるんですか!?(大笑)

テキーラの原料と作り方だけではなく、その文化と歴史を合わせて紹介、さらにテイスティングのトレーニングとテストまであります。このプログラムのことをお聞きして、CRTがどれぐらいテキーラの教育に真剣に取り組み、テキーラの文化を広めることに力を入れていることがすごく伝わってきます。


個人の方向きの「プロフェッショナリゼーション・イン・ザ・カルチャー・オブ・テキーラ」


「プロフェッショナリゼーション・イン・ザ・カルチャー・オブ・テキーラ」とテイスティングやペアリングイベントはどんなプログラムですか?「ディスティンティボ・テー」との違いは何でしょうか?


Alba: 「ディスティンティボ・テー」は飲食店やホスピタリティ施設限定のプログラムですが、個人の方から「テキーラのことを学びたい!」という声が多くあったため、ホスピタリティ施設以外の一般人向けプログラム、「プロフェッショナリゼーション・イン・ザ・カルチャ・オブ・テキーラ」を開始しました。このプログラムで学べる知識、テイスティング、最終試験まで全て「ディスティンティボ・テー」と同じです。開催に必要なコストも「ディスティンティボ・テー」と同様です。


この2つのプログラムの違いは次の 3 つのみです:

1. ディプロマの名前は「Distintivo T」ではなく「Professionalization in the culture of Tequila」になります

2. 「Distintivo T」のプレートはホスピタリティ施設限定のため、このプログラムで受け取ることはできません

3. 受講生はホスピタリティ施設の方ではないので、施設のチェックはありません


なお、テイスティングやペアリングイベントはテキーラの正しい楽しみ方と、相性のいい料理を教えます。


MT: とても大事な情報を教えて頂きありがとうございます。 一般の方でも CRT からテキーラについて学べることができるのはとてもうれしいことです。将来日本でもテキーラの本当の専門家、CRTの講師がいるプログラムやイベントが開催できればいいですね!


Alba: はい、テキーラのことならいつでもお手伝いしますよ(笑) 。実は昨年からコロナ禍の影響で、対面での活動は全て中止になりましたが、一部の国とはZOOMを利用してオンラインでの「プロフェッションナルリゼション・イン・ザ・カルチャ・オフ・テキーラ」を開催しました。 オンラインは5名から開催できます


近い将来、「ディスティンティボ・テー」 をオンラインでも開催できるように頑張ります。 同じくZOOMを利用し、試験はCRTの特別システムにログインして受験できます。この試験の受験時間は時間制限があります。 もちろん、合格した後もお店や施設での現場審査をしなければなりません。


MT: オンライもできるんですか!?とても楽しみしています!きっと日本で多くの方がオンラインでテキーラを学びたいと思います。


テキーラのグラスの中にはメキシコがある


最後に、日本の皆さんに「なぜテキーラを飲むのか」「テキーラの勉強は何故面白いのか」その答えと、CRTからのメッセージをください。


Alba: その答えは、「テキーラはあなたのグラスに“メキシコ”があるから」です (😊)


日本からメキシコに行けなくても、テキーラを一口を飲んだだけで、メキシコの水、大地、気候、アガベ、樽の味(熟成テキーラの場合)、そして作り手の働きまで感じることができると思います。 テキーラは私たちの誇りであり、メキシコから世界への贈り物です。


テキーラはゆっくりと味わうことを一番お勧めします。まずはきれいな花束を嗅ぐようにその香りを嗅ぎます。そして恋人とキスするのようにやさしく口につけます。じっくり味わったらきっと今まで気づかなかった新しい世界が発見できます。 アガベが完熟して、テキーラ作りに使えるのは最低6~7年にかかるので、0.6秒で飲み終わらないでください(笑)。


私たち CRT はいつでも皆さまのことを歓迎し、テキーラとテキーラ文化を勉強することを待っています。それではARIGATO!

 

編集後記


一見テキーラ規制委員会という堅い組織で、入館するときも緊張しましたが、インタビューに答えていただいたAlbaさんはとても気さくでフレンドリー。日本にも来日したことがあり、日本のことが大好きでまた行きたい!とお話されていました。


CRTについてある程度のことは把握しておりましたが、実際に活動内容や厳しい審査プロセスをお聞きして、テキーラがいかにメキシコの産物であり、誇りであるのかを痛感しました。そう思うとAlbaさんのおっしゃる通り、0.6秒ではとても飲むことができません。


ーグラス一杯のテキーラはメキシコが詰まっているー そう思いながら、グラスに注がれたテキーラからメキシコのアガベ畑や雲一つない青空、陽気なマリアッチの音楽を想像し、ゆったりと味わいたいものです。

 

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送信ありがとうございました

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