今回はアグアスカリエンテスにあるインターナショナル幼稚園「My Little Sunshine(以下、本文中ではMLS)」の代表・平野梓さんにお話を伺いました。
幼稚園の子どもたちがストレスのない環境でのびのびと遊んだり、学んだりしてほしいという想いからMLSを立ち上げて今年で7年目。MLSを立ち上げたきっかけや保護者の方からの声などをお聞きしました。
<目次>
アグアスカリエンテスで暮らす全ての子どもたちのための場所MLS
ーMLSの学校紹介をお願いします
平野様:インターナショナル幼稚園「My Little Sunshine」は、アグアスカリエンテスで暮らす全ての子どもたちのための場所です。2016年6月1日に立ち上げ、今年で7年目となります。3月下旬に卒園式が行われたので、今回で歴代の卒園生が50名になりました。MLSは大きく分けて3本の柱で成り立っています。
1.インターナショナル幼稚園
どこの国から来た子どもでも安心して、みんなで仲良く過ごすことができる幼稚園です。
2023年4月で児童数は32名となっています。入園するときに国籍は尋ねていない代わりに、お子さまの母語を確認するようにしています。不安な気持ちやトラブルがあった時にはお子さまの安心できる言語で話しかけるようにしているためです。当園は日本語を母語としているお子さまが多く、殆どのお子さまが日本に何かしらの関わりやルーツがあります。
アグアスカリエンテスにはインターナショナルスクールが沢山ありますが、当園の特長は日本語や日本文化を学ぶことが出来ることです。
また、保護者の方からの要望を受け、インターナショナル幼稚園のお子さま向けにスクールバスも行っています。スクールバスのドライバーには日本人の子を送迎して40年というベテランの運転手の方にお願いしているので、安心して登園いただいています。
2.プライベートレッスン
3歳のお子さまから大人の方まで約60名が受講されています。英語、スペイン語、日本語などの語学は勿論のこと、ギター、ピアノ、アート(水彩画)、サッカー、ラテンダンス、メキシコ文化講座など様々な習い事が出来ます。アグアスカリエンテスに外国からやってきた方はスペイン語の言語の壁があります。さらにアグアスはあまり英語が通じない環境でもあるため、「日本語で手続きや相談ができる」として好評を頂いてます。習い事は生徒の方からのご要望があれば講師を探すことも引き受けています。以前は、バイオリンを習いたいという生徒の方のために、アグアスのオーケストラで教鞭を取っているバイオリンの先生に来ていただいていました。幼稚園にお子さまを預けている間、同じ施設の中で保護者の方がレッスンを受けることができるのも、安心できるポイントです。
その他、日本人学校に通っているお子さまの学習補助として、中学・高校・大学受験の指導もしています。これまで慶應ニューヨーク学院、国際基督教大学高等学校、開智高等学校(1号特待)、立命館宇治高等学校等に進学しています。特に、日本で行われている実用英語検定試験(英検)は中学・高校入試で必要となるため、ご要望が多いです。当校には、英検のカリキュラムや傾向を熟知したバイリンガル講師が多数在籍しています。
オンラインレッスンの需要も増えてきており、メキシコシティや日本、過去にはアメリカから受講している方もいらっしゃいました。
3.アフタースクール
小・中学生を対象とした放課後にお子さまが集まってみんなで勉強する、日本の学童保育のようなものです。インターナショナル幼稚園やプライベートレッスンと組み合わせて利用しているお子さまが多いです。
子どもたちがメキシコでストレスを感じない幼稚園を立ち上げたい
―平野さんがMLSを始めたきっかけを教えてください
平野様:私は教育大学出身で、大学時代に塾講師、卒業後は小学校の教員として働いていました。専門は特別支援で、メキシコに来るまではYMCAで学習や対人関係につまずきのある子どもたちの発達をサポートするボランティアも行っていました。
アグアスカリエンテスには日本人学校があり、小学生と中学生は日本語で教育を受けることが出来ますが、幼稚園はありません。現地校で長い時間を過ごしてなじめる子もいれば、そうではない子もいます。
現地の幼稚園では、日本人の方はお客さんとして扱われているような様子で、遊ぶときは日本人の子どもたちだけ・別のコミュニティという雰囲気を目の当たりにしました。「こんな小さい子どもたちが辛い想いしているのはいたたまれない、大人の方でも異国の地に来てストレスがすごいのだから子どもたちはもっと辛い。どこにも安心できる場所がないのは辛いことではないか」と思いました。そんな子どもたちがのびのびと楽しく集まれる場所として、MLSは設立されました。
立ち上げから一番多い時は50名ほどの園児がいましたが、COVID19のパンデミックの頃は10名ほどになったこともあり、その時は本当に辛かったです。ただ、その時も保護者の方には助けていただき、パンデミック中も一度も休園することなく、運営を続けられたことに感謝しています。
メキシコに一時滞在しているご家庭から多く登園していただいているので、卒園生や卒業生は遠くへ行ってしまうことがほとんどです。引っ越ししてしまった卒園生が大人になったら遊びに来てくれたらいいなと思っています。
また、MLSのスタッフの中にはインターンシップとして来ている方が1~2名常にいて、そういう姿を見てる子どもたちが大きくなったらMLSでインターンシップしたいといってもらえるようになったら嬉しいですね。
みんなで勉強する・食事をするから頑張ることが出来る!
―保護者からはどのような声がありますか。
平野様:幼稚園の保護者の方からは、
スペイン語と英語の日本語の3か国語が学べる環境に魅力を感じています。園長先生はじめ、子どもたちのことを考えていることが嬉しいです。
給食で日本食、メキシコ料理をご準備頂けることが魅力的です。
と頂いています。給食では日本食だけでなくメキシコ料理も提供しているのは、食文化の違いを楽しめる子どもたちになってほしいという想いがあります。
プライベートレッスンを受講されている方からは、
体育、音楽、アートが学べるところに魅力を感じています。
個々のレベルに合わせてくれるのが嬉しいです。
事務的なことなどが日本語で出来るのが助かります
といったご意見を頂いております。
アフタースクールプログラムでは、子どもたちからの感想もご紹介しますね。
子どもたちから:自宅ではなかなか勉強ができないけれど、アフタースクールでは友達と一緒に勉強が出来て勉強がはかどる。
保護者の方:日本と違いメキシコには部活動などの放課後の活動がないため、放課後が長く、家で子どもを見る時間が大変に感じる時もあります。
特に反抗期のお子さまをお持ちの方からは、MLSで勉強してくださることで、子どもたちも保護者の方もおだやかになれます、といった意見も頂いています。
―子どもたちだけでなく、保護者の方からもとても好評を頂いているんですね!
平野様:ありがとうございます。またMLSでは“テスト応援デー”という、テスト直前の週末に子どもたちを集めて1日集中的に勉強するイベントがあります。お互いに励ましあいながら勉強し、日本人スタッフが分からないところを指導しています。また、中学生の生徒は給食を楽しみにやってくるようです。
―給食ではどういった献立を提供されていますか。
平野様:お弁当屋さんのケータリングで、ハンバーグや唐揚げなどといった和食や、enfrijoradaやentomada、quesadillaとスープといったメキシコ料理のメニューです。果物もメキシコらしい果物を出しています。お子さんは、お家では嫌いな食べ物を食べなくても幼稚園では「あの子も食べているならば、私も食べよう」という気持ちになって、友達とメニューを共有し、一緒に食べるという楽しさを感じてもらっています。
―今後、他の地域での開校は考えていらっしゃいますか。
平野様:アグアスカリエンテスも南と北に生活圏が大きく2つに分かれています。当園は南地区にあるため、よく北にも作らないんですかという意見もいただきます。他州でも開校してほしいという声もただいてます。保育の質を保つことを目標としており、色々なところに開くことで保育の質がおちることを心配しているので、今のところ他の場所に開校という計画はないですね。
まだ行っていないメキシコの9州を制覇したい
平野様:旅行が趣味で、メキシコはまだ行ったことがない州が9州あります。今はこの12州を制覇したいという気持ちがあります。COVID19が落ち着いたので、これまでハードルが高いなと感じていたアメリカの国境沿いの州に行きたいですね。
先日NHK BSでバハ・カリフォルニア州を特集している番組があり、バハ・カリフォルニアにある乾燥の大砂漠地帯とクレーター群にそそられました。バハ・カリフォルニアというとワイナリーやエンセナーダなどが有名で、広大な自然があるとは思わなかったです。私は都会よりも自然の方が好きなので、山に登ったりすることにワクワクしています。
―一番良かった場所はどこでしたか。
平野様:選ぶのがとっても難しいです(笑)ちょっと待っててください(数秒考えて・・・)。
やはり、チワワ州ですね。Chepe Expressに乗って、山のホテルに泊まり、壮大な自然に感動しました。とてもおすすめです。
また、読者の皆様も多く住んでいるメキシコシティも、アートを楽しむという点では是非訪れてほしい年です。ルイス・バラガン邸やフリーダ・カーロ博物館など、ちょっと足を伸ばしてティオティワカンも迫力があるので、おススメですね。
日本に繋がり・日本に興味のある方のセンターになりたい
―最後に、小さなお子さまを持つ保護者の方へメッセージをお願いします
平野様:私をはじめ日本人スタッフが常に思うことは、「日本に繋がり・日本に興味のある方のセンターになりたい」という想いです。幼稚園の中には・大人の本が2500冊あり、どなたでも利用できます。
今年の1月には在レオン日本国総領事館と協力し、アグアスカリエンテス文化会館で日本カレンダー展を開催しました。当日は剣道・茶道・書道の体験もできるワークショップも行い、多くの方に好評を頂きました。
また不定期ですが園庭を開放し、地域の子どもたちに遊びに来てもらえるような日を設けています。大人の方にもメキシコ文化講座の提供もしているので、アグアスカリエンテスでの生活に困ったな、疲れたなと感じたり、お子さまが幼稚園で行き詰まりを感じたら、MLSに立ち寄ってみてください!
皆さんがフラッと訪れることが出来る場所でありたいと常に願っています!
プロフィール:
平野 梓(Azusa Hirano)
兵庫県出身。大阪教育大学教育学部在籍中、個別指導塾にてアルバイトリーダーを経験。大学卒業後、大阪の中規模小学校にて勤務。もっと子どもたち一人一人と向き合いたいという思いから、小規模校であるメキシコの日本人学校へ移る。2016年、スペイン語を話せない子どもたちやその保護者が安心して過ごせる場所をメキシコにつくりたいという思いからインターナショナル幼稚園を立ち上げ、代表として運営に当たる。
編集後記
インターナショナル幼稚園として立ち上がり、子どもたちだけでなく、保護者の方の安心できる場所ともなっているMLS。その学校名の通り、子どもたちが笑顔で過ごせる場所になっていることを、インタビューからも、頂いたお写真からもとてもよく伝わってきました。
平野さんご自身も非常にアクティブで、インターン生をはじめとしたスタッフの方をお1人で纏めている姿にも感心しました。そんな平野さんの原動力となっているのは旅行で、次に行きたい場所のお話しや過去行ったことのあるお話しなどで盛り上がりました。
アグアスカリエンテスでの生活に疲れを感じた・子どもたちの笑顔がみたいなという方は是非、MLSに足を運んでみてください!
学校情報
My Little Sunshine
住所:Av. Central 230, Fracc. Rústicos Calpulli, Aguascalientes, Ags, México
Tel:449 188 7307(日本人直通)
Instagram: @kindermylittlesunshine
Facebook: kindermls
LINE@: https://lin.ee/9LE3Ddi (幼稚園)
LINE@: https://lin.ee/lScbx1L (アフタースクールプログラム)
執筆者紹介:
温 祥子(Shoko Wen)
MEXITOWN編集長兼CEO。メキシコ在住5年半。MEXITOWN立ち上げて今年で3年目に突入。これからも様々なジャンルの方をインタビューしご紹介していきます!趣味は日本食をいかにメキシコで揃えられる食材で作ることができるか考えること。日本人の方が好きそうな場所を探し回ること。