今回は、OSG RoycoのSalvador Rivera社長にインタビューを行いました。日系企業の現地法人のメキシコ人社長として、日本とメキシコお互いの良い点・悪い点を理解し、日々社員の方々の育成などに取り組むSalvador社長。流ちょうな日本語で語って頂いたのは、メキシコと日本の良い点が組み合わさった時に素晴らしい成果が生まれることや、日本人の物事を深く追求する姿勢のすばらしさ、などです。是非、ご覧ください。
<目次>
なぜなぜ分析を導入し、現場レベルで物事を解決する
MEXITOWN:メキシコ人の従業員の方の教育に力を入れている点を3つ挙げてください。
Salvador社長:
1.多様なスキルを持つ社員を育成する
1つ目は、社員に1つの事だけではなく、様々なことが出来るようにさせることです。例えば、弊社では1つの機械だけではなく複数の機械を動かすトレーニングを行ったり、1つの工程だけではなく他の工程も経験させることで、社員の多角的なスキルを育んでいます。このようなスキルを育てることにより、例えば現場で従業員が急遽病気で欠勤になったとしても、他の従業員が対応できるようになります。
2.リーダーシップとコミュニケーションの育成を重視
2つ目は、リーダーシップとコミュニケーションの育成です。現地のリーダーを育てることで、社長だけでなく中間管理職をも、現地の人材で補完できるようにしています。上層部から指図を受けて行動を起こすことは簡単なことであっても、自ら考え、問題を解決していくのは難しいですが、日々頑張って取り組んでいる課題です。
3.なぜなぜ分析を導入し、問題を解決する
3つ目は、問題が発生した際に、なぜなぜ分析などを導入することです。何かの問題が起きたとき、問題はなぜ起きたのか、原因は何かを把握することです。原因を分析するときに、なぜなぜ分析を導入しています。例えば不良品が発生した。ではなぜ不良品が発生したのかの問題を把握する。外部研修でもよく使われているなぜなぜ分析ですが、外部のものをそのまま導入するのではなく、自社に合わせた形にし、日々の問題解決に使えるようにしています。また、こうした問題の分析には日本からの出向者も含めたワーキンググループを結成し、実際の現場を見ながら従業員のレベルで問題解決に取り組んでいます。
相手の時間を尊重することの理解の難しさ
MEXITOWN:次に、メキシコ人従業員への教育で苦労した点や、従業員がなかなか理解できなかった(できない)日本のビジネス習慣を教えてください。
Salvador社長:まず、メキシコと日本は文化が違います。そのころを必ず念頭に置く必要があります。両者ともそれぞれの教育を受けて育ち、それぞれ問題を抱えていることは否定できません。
相手の時間を尊重することに関しては、説明して理解してもらうのに時間がかかっていると感じています。日本の企業文化として、相手の時間を大切にし、時間通りに打ち合わせを行うことで、相手も打ち合わせの準備をしてくれます。それにより、スムーズなコミュニケーションが実現できます。一方で、メキシコでは遅刻してもいいという習慣がある。締め切りを守らない、どうせ延長してもらえるから大丈夫だという点があります。こうした違いがあるため、日本の時間厳守の文化に関しては理解して納得できるまでが大変です。他の欧米企業や地元の企業から転職してくる従業員はあまりの時間厳守の厳しさに驚いていますね。
MEXITOWN:それでは、Salvador社長の思う、日本人の素晴らしいと思う点をあげてください
Salvador社長:日本人は物事に深く興味を持つ傾向があります。何故そういう名前なのか、何故この問題は起きたのかなど、、、更に、お互いの理解を深めるためにも、情報をより詳しく共有することを大切にしています。物事をより深く考えることによって、問題の解決もスムーズにいく。こうした点はメキシコの方にも意識していただけたらなと思っています。
漢字の持つ意味を知ることが趣味、日本語を勉強することが楽しい!
MEXITOWN:Salvador社長、日本語がとてもお上手です(インタビューも全て日本語)。日本語を勉強された経緯を教えていただけますか?
Salvador社長:私は小学校からインターナショナルスクールで英語を学んでいましたが、他の言語も勉強したいと思い、日本語を選びました。私の父がUNAM(メキシコ国立自治大学)で働いていて、福利厚生の一環として無料で言語学校に通える機会がありました。そのため、15歳の頃から日本語を勉強し始めました。当初は日本に対するイメージはあまりなく、しいて言えばマジンガーZくらいしかない。あまり多くの方が勉強していない日本語を勉強しよう、そんな気持ちから始めました。
そして大学時代に文部科学省の奨学生として、京都の同志社大学に3年間を留学しました。最初の1年間は日本語と入学試験の勉強、その後の2年間は修士の勉強でした。その経験を通じて、日本人と同じコースを受講し、言語力や理解力にスピードが出てきました。また、現地の自分よりも年上の方々のコミュニティと接して、大学で学ぶ専門用語だけでなく、実践的な日本語の勉強をさらに深めることができました。
ただ、それでも漢字と敬語が難しかったですね。特にメキシコにいると使う漢字は限られているため、日本にいると新聞の漢字などが難しく感じました。また、手書きで書こうとすると忘れてしまうこともあります。今はスマートフォンで途中まで入力すると自動的に表示されますので、書いて覚える機会が減ってきてしまいました。
また、漢字の持つ意味もとても面白いですよね。一つひとつの漢字を見てどうしてそのような組み合わせになったのか、難しさもあるけれど研究するのが好きで、趣味の一つです。日本人の方で仕方なく英語を勉強して、語学を勉強することが苦手・嫌いなかたもいらっしゃると思います。そうではなく、言語のもつ意味の深さに興味を示すことで、グッと語学の勉強が楽しくなるんじゃないかと考えています。
日本とメキシコ、それぞれの良い点が重なった時により良いアウトプットが生まれる
MEXITOWN:最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
Salvador社長:日本とメキシコは文化が異なる点も多いですが、お互いの文化と歴史を尊重することが大切だと思います。
例えば、忘年会一つを取ってみても日本とメキシコは違います。日本では忘年会は基本的に社員の方のみの参加です。しかしメキシコでの忘年会は従業員の家族も参加します。家族をも巻き込むことで、皆さんの家族のような形になれる。会社は家族にも感謝し、大事にしているということを伝えられるため、繋がりも強くなります。社員も前向きになり、仕事へのモチベーションもあがり、定着率もよくなります。
日本は時間を大切にし、メキシコはアミーゴの精神がある。両方を尊重し合い、良い面を組み合わせることで、素晴らしいアウトプットを得ることができると信じています。メキシコではお客様訪問時にオープンな形で現場まで見せてくれる。そのことにより、現場で何が起こっているのかが分かります。日本はあまり自分たちの現場をオープンにせず、打ち合わせは会議室で完結してしまうことが多く見られます。メキシコのオープンに現場を見せることと、日本の問題解決の方法、、、この2つをかけあわせることにより、よりスムーズに問題解決はできるのですから、お互いの素晴らしい点をかけあわせ、素晴らしい成果を出すことが少しでもできると信じています。
MEXITOWN:Salvador社長、本日はありがとうございました。